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サルコペニア・フレイルとは?

年齢とともに筋肉量や身体機能が低下し、日常生活の動作や活動が少しずつ困難になっていく状態を「フレイル(虚弱)」と呼びます。その中でも、特に筋肉量や筋力が減少した状態を「サルコペニア」といい、フレイルの主要な要素のひとつです。
これらは老化の自然な過程とも言えますが、放置すると転倒·骨折·寝たきりのリスクが高まり、結果として要介護や入院、死亡率の上昇にもつながります。

サルコペニア・フレイルとは?

疾患·健康寿命との関係

サルコペニアやフレイルは、以下のような疾患と深く関係しています。

  • 糖尿病や慢性腎臓病(CKD)
  • 心不全や慢性呼吸器疾患
  • 骨粗鬆症、認知症

これらの病気が筋肉量や活動量を低下させ、さらにサルコペニアを進行させるという「負の連鎖」を生むことがあります。また、逆にサルコペニアの存在が疾患の予後を悪化させることもわかっており、「健康寿命」を左右する重要な指標として注目されています。

オーラルフレイル・味覚・舌圧との関係

サルコペニアやフレイルは、手足の筋力低下だけでなく、口腔機能の衰え(=オーラルフレイル)とも深く関わっています。
「噛む」「飲み込む」「話す」「味わう」といった口の機能が低下すると、食事がとりづらくなり、栄養不足や社会的孤立につながります。これがさらに全身のフレイルや寝たきりへと連鎖していく、「フレイルサイクル」の一因となるのです。

特に舌圧(舌で押し出す力)は、飲み込み機能と深く関係しています。舌の筋肉量が減ると舌圧が低下し、食べ物や飲み物をうまく飲み込めず、誤嚥性肺炎や低栄養のリスクが高まります。院長は透析患者を対象に、舌圧の低下とサルコペニア·低栄養との関連を調査し、国際誌にて報告してきました(amijo et al., Renal Replacement Therapy 2018)。

また、味覚障害もサルコペニアの一因となることがあります。味を感じにくくなると食事の楽しみが減り、食欲の低下や食事量の減少が起こりやすくなります。味覚異常の原因はさまざまで、

  • 慢性疾患や薬剤(高血圧薬、利尿薬、抗うつ薬など)
  • 亜鉛やビタミンの欠乏
  • 口腔内の乾燥や炎症
  • 心因的要因や社会的孤立
  • 低栄養
  • 逆流性食道炎や消化器疾患

などが複雑に関与しており、全身状態·精神的背景·社会的環境を含めた多角的な評価が重要です。

こうした背景から、サルコペニアやフレイルを予防するには、「栄養·運動」だけでなく、「口腔機能」へのアプローチが欠かせません。当院では、医科と歯科の連携や舌圧·栄養状態の評価を通して、全身を包括的に診るサポートを行っています。
日々の「噛む」「飲む」「味わう」ことを守ることが、健康寿命を延ばす第一歩です。

進めないためにできること

サルコペニアやフレイルを予防·改善するには、以下のような対策が有効です。

  • 適度な運動(特に筋力トレーニングと有酸素運動)
  • バランスの取れた食事(たんぱく質・ビタミン・ミネラルの摂取)
  • 社会とのつながりを保つ(孤立の防止)
  • 口腔ケアの継続(噛む力・話す力の維持)

特に、腎臓病や糖尿病の方は栄養管理が複雑なため、専門的な指導と連携が不可欠です。

当院での治療内容

北鎌倉かみじょう内科では、以下のような取り組みを行っています。

  • INBODY(体組成計)による筋肉量・バランスの評価
  • 骨密度検査による骨の健康評価
  • 栄養指導(腎臓病や糖尿病の方への個別対応も可能)
  • 運動·生活習慣のアドバイス(医師と管理栄養士の連携)
  • 高齢者の全身評価(包括的アセスメント)による予防的対応
  • 必要に応じて、地域のリハビリ施設·訪問リハとの連携も行っています

生活の中で「少し疲れやすくなった」「最近体重が減った」「外に出るのが億劫になった」といったサインは、早期のフレイルかもしれません。早めにご相談ください。

院長のこれまでの実績と経験

これまで、大学病院や都内の基幹病院、地域のクリニックで約20年にわたり、慢性腎臓病(CKD)や透析医療、栄養管理、フレイル・サルコペニアの診療に携わってきました。

腎臓リハビリテーション指導士として、運動·栄養·心理面を統合した「全人的アプローチ」を大切にし、患者さんの暮らし全体に目を向けた医療を心がけています。透析を行う患者さんにおいては、動脈硬化やサルコペニア、栄養状態の悪化が生命予後に大きく影響するため、全身状態の包括的な評価と支援が必要です。

その一環として、舌圧(舌の筋力)と栄養·フレイルとの関係にも注目し、腹膜透析患者における舌圧低下が低栄養·サルコペニアの危険因子であることを世界で初めて報告しました(Kamijo et al., Renal Replacement Therapy 2018)。
さらに、サルコペニアやフレイルが透析患者の死亡率·炎症·栄養障害に与える影響についても論文として発表しています(Kamijo et al., Perit Dial Int 2018)。

また、加齢や慢性疾患に伴う口腔機能の低下(オーラルフレイル)と全身のフレイルの関連性にも関心を持ち、医科歯科の連携を重視した診療に取り組んでいます。

当院では、地域に根ざした「TRC(Total Renal Care)」の視点から、腎臓を中心に全身の健康と生活の質を守る医療を提供しています。

「最近、動きが鈍くなった」「食事量が減った」「よくつまずくようになった」――そうしたささいな変化が、健康寿命を左右するサインであることも少なくありません。
どんな段階でも構いません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください
小さな気づきが、大きな変化を防ぐ第一歩になるはずです。